スキャナ保存Q&Aへの異論!反論! 第6回
筆者の厳しい目で、その内容を吟味したので、異論や反論を述べさせていただきます。
スキャナ保存Q&Aへの異論!反論! 第6回
入力期間の経過に関して
Qes6
入力期限経過後の書類の保管方法についてはどのようにしたらよいか。
Ans6
「入力期限経過後の書類」とは「入力期限を徒過した書類」を指すのであれば、他のものと同様にスキャナ画像ファイル化し
て要件を充足して画像データを保存するとともに、書類の原本(紙)を法定保存期間整理して保存する必要があります。
異論反論6
・Ansは妥当性に欠け且つ、網羅性に乏しい回答と考える
・理由は、
・質問者は「入力期限経過後の書類の保管方法」について聞いている訳だから、そもそも次の問題を抱えている
1 「スキャナ保存」制度そのものを理解していない
2 一問一答を確認していない
・回答者は極小的な回答しかできていない。本来であれば、国税庁_一問一答_問26の内容から必要事項を抽出して、正確で丁寧な回答が望まれる。また、どうしてわざわざ「徒過」という表現に置き換えているのか疑問が起こる。(→「経過」と言う表現でマッチしていることは、国税庁の一問一答を見ても明白である)
では筆者の考える模範解答を披露します。
1 「スキャナ保存」制度は法4条3項に下記の様に規定されています。
4条3項
前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
要するに、
「「スキャナ保存」制度そのもの」とは、承認を受けた国税関係書類は、紙の書類の保存を電磁的記録の「保存に代える」制度なのです。
ズバリ言い直すと、この時点で紙は国税法上の原本ではなく、電子が原本になる訳です。
更に、財務省令で定めるところにより保存しなければ義務違反になる点です。
その中に入力期間の制限があります。(法律の中に「入力期間」そのものの記載がなく、財務省令に定めているので、それを見てね!になっている訳です。)
それが財務省令(施行規則)3条5項一号に下記の様に規定されているのです。
一 次に掲げるいずれかの方法により入力すること。
イ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその作成又は受領後、速やかに行うこと。
ロ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る
上記からも解るように「その業務の処理に係る通常の期間」が財務省に具体的に規定されていないことが、ある意味問題なのですが、そこは下記の取扱通達に記載されています。
参考(取扱通達4-21より抜粋)
「月をまたいで処理することも通常行われている業務処理サイクルと認められることから、最長2か月の業務処理サイクルであれば、「その業務の処理に係る通常の期間」として取り扱うこととする。(平17年課総4-5により追加、令和元年課総10-5により改正)」
ここに初めて「最長2か月」と記載されています。
筆者言わせていただくと、財務省令で定めることをしないで、行政内部の通達に逃がして記載していることは、少なからず問題があると指摘させていただきます。
裏返して、言えば、上記の業務サイクルを超えたものは保存義務違反となる訳です。
次に
2 一問一答を確認すれば「問26」にドンピシャの回答解説があります。
・「国税庁_一問一答_問26のポイント」を見てみましょう!
【回答】
入力期間を経過した国税関係書類についてもその他の保存要件に沿って入力するとともに、
当該国税関係書類を紙のまま保存することになります。
【解説】
スキャナ保存の承認を受けている国税関係書類については、その全てについてスキャナ保
存をする必要があることから、誤って入力期間を経過した場合であっても、その他の要件に従
ってスキャナ保存することとなります。ただし、入力期間の制限というスキャナ保存におけ
る要件を満たしていたい電磁的記録となることから、それをもって当該国税関係書類の保存
に代えることはできず、元の書類は紙のまま保存することとなります。
なお、この取扱いは、たまたま入力期間を経過してしまった場合に限るものであり、入力
期間を経過した場合は本件要件違反となりますので、入力期間の経過が散見されるような場
合にはこの取扱いはなく、また、元となった国税関係書類を保存することによって、保存要
件を満たしているとみなすものではありません。
コメント
これで、お解りいただけましたよね!
法律→財務省令→通達→一問一答と丁寧且つ簡潔に、回答を導き出すことが肝要です。
紙面の都合があることを差し引いても、もうすこし、工夫して、思いやりのある回答があるべき姿だと感じました。
しっかり法令要件を読みこなして、その関係する一問一答の隅々まで理解して、正しく導きけるように精進したいものです。
筆者紹介 益田康夫 関西大学商学部卒業 本籍地神奈川県 メアド masuda@e-sol.tokyo
1984年に社会人になり、IT業界一筋ながら3回の転職を経て現在に至っています。
特に2008年のリーマンショック後の不況の影響を受けて、2010年6月末にリストラ退社して現本業のアンテナハウス株式会社 https://www.antenna.co.jp/ に入社しました。
Sun MicrosystemsやOracleを中心にしたITインフラから、IAサーバとしてのCompaqやIBMなどや、文書管理システムやポータルシステムを販売していた前職と、現在のアンテナハウスでのPDF技術や電子ファイルの変換技術などを中心にした、e-ドキュメントソリューションを探求してノウハウを習得してきました。
特に、2011年以降、個人で学習時間をひねり出して、文書情報管理士資格2級、1級、上級と最短記録でレベルアップさせ、更に国家資格の行政書士※、日商簿記3級を2015年までに取得しました。
- 行政書士とは、https://www.gyosei.or.jp/information/ をご覧ください。
筆者が経営する株式会社e-SOLは2019年1月8日の設立されました。