請求書控の電子取引保存でプロジェクト管理をどうすれば?!
とJ-SOX対応企業から相談を受けました。
状況としては
・請求書控が複数のプロジェクトを跨いでいて、別で管理している
・売掛仕訳や入金仕訳は、請求書控単位でしか実施していない
・要するに
・会計仕訳からは請求書控しか見えない
そこで
J-SOX対応企業から「請求書控の電子取引保存でプロジェクト管理をどうすれば?!」と相談を受けた訳です。
皆様ならどうしますか?
以下が、私のアドバイスです。
参考になれば幸いです。
1 電子取引は「その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。」がポイントです。
2 当該請求書控えは、下記要件の確保が必要です。
【要 件】
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。) (規2②一イ、⑥七、4①)
見読可能装置の備付け等(規2②二、4①)
検索機能の確保(規⑥六、4①)
次のいずれかの措置を行う(規4①)
一 タイムスタンプが付された後の授受
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す ※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関 する規程を定めている場合に限る。
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、 授受及び保存を行う。
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
3 「次のいずれかの措置を行う(規4①)」の選択で一番簡単(責任者の負担が少なく)で確実なのは「ニ」になります。
理由は、
「一」:現実的に無理:100%タイムスタンプ付きで送ったりもらったりすることは不可能
「三」:システムを利用して保存だけでなく、送ったりもらったりする機能まで備えるのは困難
「四」:「訂正削除の防止に関する事務処理規程」の備付けに加えて、その内容で内部統制※しなければならないから
4 ※ここで求められる内部統制とは、具体的に次の点が大きな負担になります。
国税庁のひな形より(訂正削除を行う場合)を抜粋
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.nta.go.jp%2Flaw%2Fjoho-zeikaishaku%2Fsonota%2Fjirei%2Fword%2F0021006-031_d.docx&wdOrigin=BROWSELINK
第9条
業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、処理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。
一 申請日
二 取引伝票番号
三 取引件名
四 取引先名
五 訂正・削除日付
六 訂正・削除内容
七 訂正・削除理由
八 処理担当者名
2 管理責任者は、「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。
3 管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する
<筆者コメント:責任者には営業から切羽詰まった修正承認依頼が容赦なく連絡がくる可能性が高いです。>
5 さて、仕上げは、
「請求書控の電子取引保存でプロジェクト管理をどうすれば?!」です。
「請求書控が複数のプロジェクトを跨いでいて、別で管理している」ものが「補助記録帳」になります。
「売掛仕訳や入金仕訳は、請求書控単位」で会計システムと関係性が確保できています。
なので次の事を明確にすればよいです。
・仕訳の入力から会計システムにデータが流れる内容の可視化
・補助記録帳の存在とその管理内容
・会計システムからエビデンスである請求書控えが紐づき、請求書控えから補助記録帳がどのように関連づいているか
以上の各システムのデータの総合的な流れが可視化できる概要説明書の作成と備え付けが重要になります。
ご参考になれば、幸いです。
筆者紹介 益田康夫 関西大学商学部卒業 本籍地 神奈川県 メアド masuda@e-sol.tokyo 1984年に社会人になり、IT業界一筋ながら 3回の転職を経て現在に至っています。 特に2008年のリーマンショック後の不況の 影響を受けて、2010年6月末にリストラ退社して現本業のアンテナハウス株式会社 https://www.antenna.co.jp/ に入社しました。 Sun MicrosystemsやOracleを中心 にしたITインフラから、IAサーバとしてのCompaqやIBMなどや、文書管理システムや ポータルシステムを販売していた前職と、現在のアンテナハウスでのPDF技術や電子 ファイルの変換技術などを中心にした、e-ドキュメントソリューションを探求して ノウハウを習得してきました。 特に、2011年以降、個人で学習時間をひねり出して 、文書情報管理士資格2級、1級、上級と最短記録でレベルアップさせ、更に国家資格 の行政書士※、日商簿記3級を2015年までに取得しました。 行政書士とは、https://www.gyosei.or.jp/information/ をご覧ください。 筆者が経営する株式会社e-SOLは2019年1月8日の設立されました.