某社団法人が最近ネットに電子帳簿保存法のQ&Aを公開した。
筆者の厳しい目で、その内容を吟味したので、異論や反論を述べさせていただきます。
スキャナ保存Q&Aへの異論!反論! 第7回
過去分重要書類に関して
Qes7
重要書類の過去分スキャンにおいて、「一定の要件」について具体的な内容を教えて欲しい。
Ans7
①書類を受領してからの入力期間の制限がないこと、②適正事務処理要件は国税関係書類の入力に関する事務について、処理
の内容を確認するための検査を行う体制及び手続に関する規程を定めるとともに、これに基づき処理をすることが従来の保存
要件と異なる部分であり、他については従来と同様の要件が求められます。なお、適用を受けるためには、電磁的記録による
スキャナ保存の承認を受けたうえで、所轄税務署長に対して国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の適用届出書(過
去分重要書類)の提出をすることが必要です。
異論反論7
・Ansは妥当性に欠け且つ、正確性に乏しい回答と考える
・理由は、
・質問者は「
重要書類の過去分スキャンにおいて、「一定の要件」について具体的な内容」について聞いている訳だから、回答には次の分解が必要と考えられます。
1 「保存義務者は、過去分重要書類について、当該過去分重要書類の種類等を記載した適用届出書を所轄税務署長等に提出
した場合には、一定の要件の下、スキャナ保存を行うことができることとする。(第3 条関係) 」
が財務省令第3条第7項に規定されていることが一丁目一番地として入り口である。
2 「要件」は、上記に「基準日」「適用届出書」「同一書類の
「適用届出書」の提出不可」「検査」「事務の手続きを明らか
にした書類」などの要件が規定されている。
3 取扱通達4-40(
「事務の手続きを明らかにした書類」の改定備付へのアドバイス)
4
国税庁_一問一答_問62(入力期間は「数カ月」が限度)、63(「検査時期」の自由度)
・回答者は極小的な回答しかできていない。本来であれば、上記の様に施行規則、取扱通達、一問一答などの内容から必要事項を
抽出して、正確で丁寧な回答が望まれる。
・一番の問題は、この回答では、繰り返し(常時)過去分重要書類のスキャナ保存ができてしまうと解釈されても(本来駄目だ
と!注意喚起が出来ていない)致し方ない問題を抱えてしまっている。
筆者が考える模範解答
1)「過去分重要書類」も「重要書類」も基本的に一問一答_問12(表)の通り同じ要件です。
2)
「過去分重要書類」で異なる要件部分は、「入力期間」の制限がないことと、「適正事務処理要件」に関しては「検査」のみ必
要ななります。
3)注意が必要なの点は、同書類で、定常的に「過去分重要書類のスキャナ保存」はできないことと、その期間は「数カ月」までと
一問一答_問62に記載されています
4)
「事務の手続きを明らかにした書類」(当該事務の責任者が定められているもの)の備付けをしての運用が必要
となります。
以下は、上記を導き出した、根拠などについて解説します。
1
「過去分重要書類」については規則3条7項に下記の様に規定されています。(解りやすくするために、改行を入れ、<>ないにキーワードを追記しています)
-----ここから
7 法第四条第三項の承認を受けている保存義務者は、当該承認を受けている国税関係書類のうち法第六条第二項に規定する代える日(第二号において「基準日」という。)前に作成又は受領をした書類(一般書類を除く。以下この条において「過去分重要書類」という。)に記載されている事項を電磁的記録に記録する場合において、
あらかじめ、その記録する事項に係る過去分重要書類の種類及び次に掲げる事項を記載した届出書(以下この条において「適用届出書」という。)を所轄税務署長等(法第四条第一項に規定する所轄税務署長等をいう。次項、第五条第三項及び第六条において同じ。)に提出したとき(従前において当該過去分重要書類と同一の種類の書類に係る適用届出書を提出していない場合に限る。)は、第五項第一号<入力期間の制限>及び第四号<適正事務処理要件>(同号イ<相互牽制>及びハ<再発防止>に係る部分に限る。)に掲げる要件にかかわらず、当該電磁的記録の保存に併せて、当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限る。)の備付けを行うことにより、当該過去分重要書類に係る電磁的記録の保存をすることができる。
この場合において、同項<第五項>の規定の適用については、同項第二号ロ<定期検査>中「読み取る際に(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領後その者が署名した当該国税関係書類について特に速やかに)」とあるのは「読み取る際に」と、同号ハ<再発防止>中「情報(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列四番以下であるときは、⑴に掲げる情報に限る。)」とあるのは「情報」と、同項第四号<適正事務処理要件>中「の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務」とあるのは「に係る記録事項の入力に関する事務」と、「当該各事務を」とあるのは「当該事務を」と、同号ロ<定期検査>中「当該各事務」とあるのは「当該事務」と、「定期的な検査」とあるのは「検査」とする。
一 届出者の氏名又は名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地及び法人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第十五項(定義)に規定する法人番号をいう。以下この号、第五条第一項第一号並びに第六条第一項第一号及び第二項第一号において同じ。)(法人番号を有しない者にあっては、氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地)
-----ここまでが
規則3条7項です。
要するに、
規則3条7項から読み取れる要件は次のようになります。
・「基準日」がある
・「適用届出書」が必要
・
従前において当該過去分重要書類と同一の種類の書類に係る適用届出書を提出していない場合に限る。
・「第五項第一号<入力期間の制限>及び第四号<適正事務処理要件>(同号イ<相互牽制>及びハ<再発防止>に係る部分に限る。)に掲げる要件」は確保不要だが、検査を行う体制とその検査が必要
・事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限る。)の備付け
となります。
その他の要件は、国税庁_一問一答_問12の要件比較表を見れば、一目瞭然です。
その他情報
参考1
「事務の手続を明らかにした書類」(取扱通達4-40より抜粋)
(電磁的記録の作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類の取扱い)
4-40 一般書類や過去分重要書類の保存に当たって、既に、電磁的記録の作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類を備え付けている場合において、これに当該事務の責任者の定めや対象範囲を追加して改訂等により対応するときは、改めて当該書類を作成して備え付けることを省略して差し支えないものとする。(令和元年課総10-5により追加)
と、とても丁寧に説明してくれている点を見逃してはならない。
参考2
一問一答_問62記載より
・過去分重要書類のスキャナ保存については入力期間の制限はありませんので、数カ月間に渡ってスキャナ保存の作業を行うことも可能です。
(裏がして解釈すると10か月を超える作業は差し控えるべき、と読み取れます。)
一問一答_問63記載より
検査の方法については、規則第3条第5項4号ロに規定する「定期的な検査」と同様に、
「当該事務に係る処理の内容を確認するための検査を行う」必要がありますので、例えば、必
要に応じ、対象となる書類の中からサンプル的にデータと書類を検査することとして差し支えあり
ません。また、時期については、書類を破棄する前であれば、スキャン作業を全て完了してか
ら検査しても結構ですし。同作業の途中でそれまでスキャンした書類を適宜の単位に区切って
検査しても結構です。いずれにせよ、経理事務の実情に応じて検査を実施てください。
コメント
これで、お解りいただけましたよね!
財務省令→通達→一問一答と丁寧且つ簡潔に、回答を導き出すことが肝要です。
紙面の都合があることを差し引いても、もうすこし、工夫して、思いやりのある回答があるべき姿だと感じました。
しっかり法令要件を読みこなして、その関係する一問一答の隅々まで理解して、正しく導きけるように精進したいものです。
筆者紹介 益田康夫 関西大学商学部卒業 本籍地神奈川県 メアド masuda@e-sol.tokyo
1984年に社会人になり、IT業界一筋ながら3回の転職を経て現在に至っています。
特に2008年のリーマンショック後の不況の影響を受けて、2010年6月末にリストラ退社して現本業のアンテナハウス株式会社 https://www.antenna.co.jp/ に入社しました。
Sun MicrosystemsやOracleを中心にしたITインフラから、IAサーバとしてのCompaqやIBMなどや、文書管理システムやポータルシステムを販売していた前職と、現在のアンテナハウスでのPDF技術や電子ファイルの変換技術などを中心にした、e-ドキュメントソリューションを探求してノウハウを習得してきました。
特に、2011年以降、個人で学習時間をひねり出して、文書情報管理士資格2級、1級、上級と最短記録でレベルアップさせ、更に国家資格の行政書士※、日商簿記3級を2015年までに取得しました。
筆者が経営する株式会社e-SOLは2019年1月8日の設立されました。
2020年05月10日 11:24