東証一部上場の会計・人事パッケージやクラウドサービスをしている企業から次の質問が入りました。
質問
スキャナ保存で電子化書類と会計帳簿との相互関連性の要件確保の中で
例えば、「伝票仕訳」で売掛入力を複数の請求書に対して1伝票番号で実施している時
当該伝票番号と複数の請求書が1ファイルのPDF等で関連性付けても当該要件確保となるか?
皆さんは、どう思いますか?
つぎの可能性があるますよね?
1)要件確保となる
2)要件確保とならない
3)法令要件が明確でないのでわからない
どう思われましたか?
答えを見る前に通達を一つ見てみましょう!
(帳簿書類間の関連性の確保の方法)
4-36 規則第3条第5項第5号((帳簿書類間の関連性の確保))に規定する「関連性を確認することができる」とは、例えば、相互に関連する書類及び帳簿の双方に伝票番号、取引案件番号、工事番号等を付し、その番号を指定することで、書類又は国税関係帳簿の記録事項がいずれも確認できるようにする方法等によって、原則として全ての国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と国税関係帳簿の記録事項との関連性を確認することができることをいう。
この場合、関連性を確保するための番号等が帳簿に記載されていない場合であっても、他の書類を確認すること等によって帳簿に記載すべき当該番号等が確認でき、かつ、関連する書類が確認できる場合には帳簿との関連性が確認できるものとして取り扱う。(平17年課総4-5により追加、平成27年課総9-8により改正)
(注) 結果的に取引に至らなかった見積書など、帳簿との関連性がない書類についても、帳簿と関連性を持たない書類であるということを確認することができる必要があることに留意する。
当該通達のポイントは、
相互に関連する書類及び帳簿の双方に伝票番号、取引案件番号、工事番号等を付し、その番号を指定することで、書類の記録事項がいずれも確認できるようにする方法等によって、原則として全ての国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と国税関係帳簿の記録事項との関連性を確認することができることをいう。
なので、ここだけ見れば、どうやら「
1)要件確保となる」でもよさそうですよね?
果たしてそれで良いのでしょうか?
このあたりが電帳法の複雑骨折的な難解な法令要件の見落とし地獄が待っている訳です。
それが「一の入力単位」です、
通達では
(一の入力単位の意義)
4-24 規則第3条第5項第2号ロ((タイムスタンプ))に規定する「一の入力単位」とは、複数枚で構成される国税関係書類は、その全てのページをいい、台紙に複数枚の国税関係書類(レシート等)を貼付した文書は、台紙ごとをいうことに留意する。(平17年課総4-5により追加、平成27年課総9-8により改正)
と規定されています。
さらに
通達趣旨説明の解説では
【解説】
規則第3条第5項第2号ロでは、「一の入力単位」ごとにタイムスタンプを付すこととされている。この場合の「一の入力単位」とは、例えば、3枚で構成される請求書の場合には3枚で一つの国税関係書類を構成しているため、一度に読み取る3枚が一の入力単位となる。また、台紙に小さなレシートなどを複数枚貼付した場合は、複数の国税関係書類を一回のスキャニング作業で電子化することとなるため、台紙が一の入力単位となることを明らかにしたものである。
したがって、ここにいう入力単位とは、意味として関連付けられたもの及び物理的に関連付けられたものをいうのであるから、お互いに関係を持たない複数の国税関係書類を一度にスキャニングしたからといって、それをもって一の入力単位ということにはならない。
なお、複数枚の国税関係書類を台紙に貼付してスキャニングした場合、それぞれの国税関係書類ごとに関連する帳簿の記録事項との関連性が明らかにされ、適切に検索できる必要があることに留意する。
とあります。
さらにさらに
検索機能確保要件が複雑に絡んでくるのです。
4-39 規則第3条第5項第7号((準用))の規定により読み替えられた同条第1項第5号イ((検索機能の確保))に規定する「取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、例えば、次に掲げる国税関係書類の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目がこれに該当する。
なお、検索は国税関係書類の種類別又は勘定科目別にできることを要することに留意する。(平17年課総4-5により追加、平成27年課総9-8、令和元年課総10-5により改正)
(1) 領収書 領収年月日、領収金額、取引先名称
(2) 請求書 請求年月日、請求金額、取引先名称
(3) 納品書 納品年月日、品名、取引先名称
(4) 注文書 注文年月日、注文金額、取引先名称
(5) 見積書 見積年月日、見積金額、取引先名称
【解説】
規則第3条第5項第5号において準用する規則第3条第1項第5号イ(読み替え後)に規定する「取引年月日、その他の日付け、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、次のような記録項目が該当すると考えられるから、この考え方に基づいて、主な国税関係書類の種類ごとに該当の具体的記録項目を例示したものである。
イ 日付け(国税関係書類に記載すべき日付けをいう。)
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ここまでついてこられた方は
上級の方です。
参考になりましたか!?
整理をすると
「帳簿書類の相互関連性」は
「一の入力単位」と
「検索要件確保上の請求書などの書類自体の掲載年月日検索」
の要件により
スキャナ保存で電子化書類と会計帳簿との相互関連性の要件確保の中で
例えば、「伝票仕訳」で売掛入力を複数の請求書に対して1伝票番号で実施している時
当該伝票番号と複数の請求書が1ファイルのPDF等で関連性付けても当該要件確保とならない!
となります。
これは、JIIMA認証ソフトを利用していても、保存義務違反となることなので、厳重に注意していただきたい点となります。
以上 皆様の参考になれば幸いです。
筆者紹介 益田康夫 関西大学商学部卒業 本籍地 神奈川県
メアド masuda@e-sol.tokyo
1984年に社会人になり、IT業界一筋ながら 3回の転職を経て現在に至っています。 特に2008年のリーマンショック後の不況の 影響を受けて、2010年6月末にリストラ退社して現本業のアンテナハウス株式会社 https://www.antenna.co.jp/ に入社しました。 Sun MicrosystemsやOracleを中心 にしたITインフラから、IAサーバとしてのCompaqやIBMなどや、文書管理システムや ポータルシステムを販売していた前職と、現在のアンテナハウスでのPDF技術や電子 ファイルの変換技術などを中心にした、e-ドキュメントソリューションを探求して ノウハウを習得してきました。 特に、2011年以降、個人で学習時間をひねり出して 、文書情報管理士資格2級、1級、上級と最短記録でレベルアップさせ、更に国家資格 の行政書士※、日商簿記3級を2015年までに取得しました。 行政書士とは、https://www.gyosei.or.jp/information/ をご覧ください。 筆者が経営する株式会社e-SOLは2019年1月8日の設立されました。
2020年02月07日 07:37