スキャナ 電帳法全体 平成表記 西暦会計年度
133 154,006 25年度 FY2013
152 165,372 26 FY2014
380 177,180 27 FY2015
1,050 188,355 28 FY2016
1,846 200,726 29 FY2017
2,898 225391 30 FY2018 ← 電帳法全体は2.5万件増加。スキャナ保存は千件しか増加していない!
電子帳簿保存法 の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。
第一条(趣旨)には次のように定められている
「この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法、法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。」
法制度を端的に且つわかりやすく定めてくれていて、この通り負担を軽減したいものです。
しかし、現実的には紙書類のままの方が「スキャナ保存」と比較して負担が軽い、だから普及しないのが現実です。
具体的にその問題点を紐解いてみよう!
最初に
第一条後段の「納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等」よりも前段の「国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ」を明らかに重視しすぎているからです。
それは、国税庁が定めている「電子帳簿保存法取扱通達」に定められている過剰ともいえる要件が沢山あることが大きな問題といえます。
具体的には法4条3項に
「保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
」と定めがあるように、「所轄税務署長等の承認」が条件となり、承認されるためには下記の電子帳簿保存法施行規則の各要件を確保しなければなりません。
令和4年1月以降「所轄税務署長等の承認」は不要になりました。
下記本文中の▲箇所が紙書類保管と比較して過剰と考えられる要件です。
その中で特別過剰で「スキャナ保存制度」の導入を諦める原因となるものに■印を追加します。
---ここから施行規則第三条スキャナ保存部分を抽出したもの---
第三条
3 法第四条第三項に規定する財務省令で定める書類は、国税関係書類のうち、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類とする。
4 法第四条第三項に規定する財務省令で定める装置は、スキャナとする。
5 法第四条第三項の承認を受けている保存義務者は、次に掲げる要件に従って当該承認を受けている国税関係書類に係る電磁的記録の保存をしなければならない。
一 次に掲げるいずれかの方法により入力すること。
イ ▲当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその作成又は受領後、速やかに行うこと。
ロ ▲■当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
二 前号の入力に当たっては、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
イ スキャナ(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を使用する電子計算機処理システムであること。
(1) 解像度が、日本工業規格(工業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)第十七条第一項(日本工業規格)に規定する日本工業規格をいう。以下同じ。)Z六〇一六附属書AのA・一・二に規定する一般文書のスキャニング時の解像度である二十五・四ミリメートル当たり二百ドット以上で読み取るものであること。
(2) 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ二百五十六階調以上で読み取るものであること。
ロ 当該国税関係書類をスキャナで読み取る際に(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領後その者が▲署名した当該国税関係書類について特に速やかに)、▲■一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係る▲タイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。第八条第一項第一号において「タイムスタンプ」という。)を付すこと。
(1) 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間(国税に関する法律の規定により国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間をいう。)を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
(2) 課税期間(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第九号(定義)に規定する課税期間をいう。)中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、▲一括して検証することができること。
ハ 当該国税関係書類をスキャナで読み取った際の次に掲げる情報(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本工業規格A列四番以下であるときは、(1)に掲げる情報に限る。)を保存すること。
(1) 解像度及び階調に関する情報
(2) ▲当該国税関係書類の大きさに関する情報 ← 「大きさに関する情報」は、コピー機や複合機では保存確認ができないので、このような要件は、無くして欲しい。(専用スキャナの場合は保存確認可能)
ニ ▲当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
三 ▲当該国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
<2022年3月14日オレンジ色:下記は「適正事務処理要件」箇所になり、要件確保は不要になった代わりに、罰則規定が設けられました。>
四 当該国税関係書類の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務について、その適正な実施を確保するために必要なものとして次に掲げる事項(当該保存義務者が中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第五項(中小企業者の範囲及び用語の定義)に規定する小規模企業者である場合であって、ロに規定する定期的な検査を国税通則法第七十四条の九第三項第二号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に規定する税務代理人が行うこととしているときは、イに掲げる事項を除く。)に関する規程を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理すること。
イ ▲相互に関連する当該各事務(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領に関する事務を除き、当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う事務を含むものに限る。)について、それぞれ別の者が行う体制
ロ ▲当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続 ← 「定期検査」が全数検査でなくてもよく、抜き取り検査で良いとセミナーなどでよく聞くが、具体的な検査方法が一問一答に記載されていない。よって困る。
ハ ▲当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制
五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項(当該国税関係帳簿が、法第四条第一項又は第五条第一項若しくは第三項の承認を受けているものである場合には、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの記録事項)との間において、▲相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
六 当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をカラーディスプレイの画面及び書面に、次のような状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
イ 整然とした形式であること。
ロ 当該国税関係書類と同程度に明瞭であること。
ハ 拡大又は縮小して出力することが可能であること。
ニ 国税庁長官が定めるところにより日本工業規格Z八三〇五に規定する四ポイントの大きさの文字を認識することができること。
七 第一項第三号及び第五号の規定は、法第四条第三項の承認を受けている保存義務者の当該承認を受けている国税関係書類に係る電磁的記録の保存について準用する。この場合において、同号イ中「、勘定科目」とあるのは、「その他の日付」と読み替えるものとする。
第一項第三号
三 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(法第六条第一項に規定するプログラムをいう。以下この条及び第五条第二項において同じ。)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)の備付けを行うこと。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの概要を記載した書類
ロ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類)
及び第五号
五 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ ▲■取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目(以下この号において「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
------ここまでが施行規則---
では、その理由について考察してみましょう!
▲■当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
→ 請求書や納品書や領収書などは最大1カ月の業務サイクルを定めて保管して、その翌週にスキャンなど入力を完了しなければならない。
→ 内部統制している企業は、上記業務サイクル期間では運用することができない企業が散見されている。
内部統制している企業は
発注部門が、請求書を受領して、検収確認をして、経理部門に回付して、経理部門が業務確認して支払い処理して、取引先との問い合わせ確認などを済ませるまでに2カ月を超えることが通常です。最大1カ月の縛りを理由に断念する企業が後を絶ちません。
上記は、令和頑年緩和で業務サイクルが2カ月に緩和されました。
この2カ月緩和は、大きい意義があります。
私のクライアントも、申請を再度しようと動き出しています。
▲■一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係る▲タイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。
→ 「一の入力単位」は、通達で定められており、通達趣旨説明で次のように解説されている
規則第3条第5項第2号ロでは、「一の入力単位」ごとにタイムスタンプを付すこととされている。
この場合の「一の入力単位」とは、例えば、3枚で構成される請求書の場合には3枚で一つの国税関係書類を構成しているため、一度に読み取る3枚が一の入力単位となる。
また、台紙に小さなレシートなどを複数枚貼付した場合は、複数の国税関係書類を一回のスキャニング作業で電子化することとなるため、台紙が一の入力単位となることを明らかにしたものである。
したがって、ここにいう入力単位とは、意味として関連付けられたもの及び物理的に関連付けられたものをいうのであるから、①お互いに関係を持たない複数の国税関係書類を一度にスキャニングしたからといって、それをもって一の入力単位ということにはならない。
なお、複数枚の国税関係書類を台紙に貼付してスキャニングした場合、それぞれの国税関係書類ごとに関連する帳簿の記録事項との関連性が明らかにされ、適切に検索できる必要があることに留意する。
規則第3条第5項第7号((準用))の規定により読み替えられた同条第1項第5号イ((検索機能の確保))に規定する「取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、例えば、次に掲げる国税関係書類の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目がこれに該当する。
なお、②検索は国税関係書類の種類別にできることを要することに留意する。(平17年課総4-5により追加、平成27年課総9-8により改正)
上記 通達趣旨説明などで問題点が2点ある
① 紙の証憑を用いての伝票仕訳をする際は、複数の紙証憑を同じ伝票番号の複数行に順次入力することを一般的に行うが、スキャナ保存要件ではこの時の対象証憑を行単位で独立したスキャンを求めている。
要するに「複数の紙証憑を同じ伝票番号の複数行に順次入力」した証憑束をまとめてスキャンして、1ファイルのPDFなどにすることを通達上認めていない。
② 更に「検索は国税関係書類の種類別にできること」と通達上定めれれている。
これらの通達上の定めにより、本来的に紙証憑で工事単位やプロジェクト単位や契約単位で便利に証憑をフォルダーなどに閉じて紙保管している企業のことが全く考慮されていないことが理由です。
日本は製造業が元気でなければなりません。
製造業の多くは中小企業です。
これらの企業は、部品を仕入れて、加工組み立てを施して、製品にして販売しています。
なので、仕入時の証憑が圧倒的に多く、販売時の証憑が少なくなります。
仕入するには
・取引基本契約
・見積書
・注文書
・納品書
・検収書
・請求書
などと一連の証憑が作成受領される訳です。
これらのものを取引の単位で束ねて、紙証憑を保存しているのが、一般的です。
電子帳簿保存法の制度設計をして、通達や一問一答を作成している方々は、中小企業の現場を知らないで
制度設計をするから、使いずらい、要件が過度に厳しく、理解に苦しむ、要件があるわけです。
本質的な問題は、法律を補い規定を定めている施行規則が民間企業を縛るものであるにもかかわらず、通達や通達趣旨説明で施行規則で定めていないような細かな要件を定めすぎていることが問題であり、その問題は十分企業の実務を把握していない者が行政側の論法で過剰に定めているからです。見方を変えると「スキャナ保存」制度が納税制度の不正の温床にならないように慎重に通達で縛りに来ているからとも言えます。
本法律施行規則や通達はH27年以降毎年見直されてきているが、今後なお一層の見直しがないと「5/10,000」程度しか利用しない残念な制度で終わってしまうことでしょう。
(但し、企業側も度重なる検査データの改ざんや不正がマスコミ経由で露見していますが、内部統制や税務コンプライアンスを自主的に強化しなければならないことも急務です。)
筆者は、微力ながらそうならないように今後も発信していきます。
下記は、
令和元年9月
経済社会の構造変化を踏まえた 令和時代の税制のあり方(案)より抜粋したも
のです。特に気になる点に色を付けてみました。
https://e-sol.tokyo/blog_articles/20191125.html
ここから読み取れるポイントは、2つです。
1)納税者への取引情報と帳簿情報をデータで積極的に開示させる動き
2)税務調査自体は、悪質事業者にフォーカスする
が大きな動きに今後なっていくと感じました。
皆様の参考になると思います。
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2019年05月01日 16:13