紙請求書を電子化業務処理後、印刷保存して税法的に大丈夫?
本音トークで
「紙請求書を電子化業務処理後、印刷保存して税法的に大丈夫?」と質問を受けました。
詳しい状況は
1 紙で「請求書」を入手している中で
2 それを電子化してワークフローに添付して買掛支払業務処理をしている
3 処理完了後は、電子化した電子ファイルから印刷して、紙の「請求書」を保存している
4 監査や税務調査では3を必要に応じて提示している
5 4の対応で今まで支障はなかった
6 税法上、これらの考えや対応は正しいのだろうか?
と、言うものです。
さて、皆様は、如何ですか?
結論から先に言いますと
税法上の違反となります。
理由は、法人税法と消費税法から明確です。
法人税法施行規則では紙の書類を大前提に、紙のまま保存しなければなりません。
法人税法施行規則59条(抜粋)
(帳簿書類の整理保存)
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
今回の質問のケースの問題点は
・紙の「請求書」の保存が定かでない点
・紙の「請求書」を電子化保存し、それを原本として扱うのであれば「スキャナ保存」(電帳法4条3項の制度)の要件確保が出来ていない点
の2点となります。
つぎに消費税法を見ると
下記の仕入れ税額控除の規定で、紙の「請求書」保存が基本で、「電子取引」(PDF等のデータ)の「請求書」の場合は、
電帳法の「電子取引」の保存要件は、それを紙に印刷しての保存は認められなくなったが、仕入れ税額控除の要件としては
それを紙に印刷しても認められると、書かれています。
下記を注意深く読んでみてください。
https://elaws.e-gov.go.jp/
第三十条 事業者が、
次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課
対する消費税額から、
つた特定課税仕入れに係る消費税額及び当該課税期間における保税
されるべき消費税額の合計額を控除する。
7 第一項の規定は、
当該保存がない課税仕入れ、
==============================
電帳法_電子取引_問-4「消費税法上、
、仕入税額控除の適用を受けることができ」る根拠
https://www.nta.go.jp/law/
問-4の該当箇所の抜粋
電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等については
ないこととされましたが、消費税法上、
は、仕入税額控除の適用を受けることができます。
まとめ
紙の「請求書」は、それそのものが税法上の原本なので、整理しての保存が必要
業務処理上、それを電子化するのは自由だが、電子化したものを原本にするためには電帳法「スキャナ保存」の要件確保が必須
但し、PDF「請求書」を入手した時の仕入れ税額控除の扱いでは、それを印刷保存したもので、適用を受けることができるが、
印刷したものは法人税法上の原本ではなく保存義務違反となる。
・・・やはり 複雑骨折しているのだが、税務コンプライアンス上、専門家はここまで把握理解が必要なのは事実。
ご参考になれば、幸いです。
筆者紹介 益田康夫 関西大学商学部卒業 本籍地 神奈川県 メアド masuda@e-sol.tokyo 1984年に社会人になり、IT業界一筋ながら 3回の転職を経て現在に至っています。 特に2008年のリーマンショック後の不況の 影響を受けて、2010年6月末にリストラ退社して現本業のアンテナハウス株式会社 https://www.antenna.co.jp/ に入社しました。 Sun MicrosystemsやOracleを中心 にしたITインフラから、IAサーバとしてのCompaqやIBMなどや、文書管理システムや ポータルシステムを販売していた前職と、現在のアンテナハウスでのPDF技術や電子 ファイルの変換技術などを中心にした、e-ドキュメントソリューションを探求して ノウハウを習得してきました。 特に、2011年以降、個人で学習時間をひねり出して 、文書情報管理士資格2級、1級、上級と最短記録でレベルアップさせ、更に国家資格 の行政書士※、日商簿記3級を2015年までに取得しました。 行政書士とは、https://www.gyosei.or.jp/information/ をご覧ください。 筆者が経営する株式会社e-SOLは2019年1月8日の設立されました。